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カイガラムシはアブラムシの仲間で、バラや果樹、観葉植物、多肉植物など様々な植物に寄生し、成長を阻害する害虫です。名前にカイガラとついているだけあって、成虫はヨロイの役割を果たす外殻のおかげで、殺虫薬剤が効きにくいので簡単に駆除ができません。
今回はそんな厄介な害虫のカイガラムシの生態と、その防除方法をご紹介します。
カイガラムシはカメムシ類の昆虫で、体長はおよそ1〜10mmほどの昆虫です。体色は白をはじめ、灰色、赤褐色、黒などが存在します。白っぽくふわふわした綿のようであったり、殻に覆われていたり、トゲが付いたものなど、種類によって見た目も様々です。
種類によって特徴が二分でき、一つは成虫になると脚が退化して枝や葉に固着するタイプ。もう一方は成虫になっても歩き回って繁殖するタイプに分かれます。
カイガラムシは糸のような細長く尖らせた口を枝葉に刺して、養分を吸汁して寄生する害虫です。アブラムシよりは繁殖力は弱いですが、種類によっては単一の性だけでも繁殖できる無性生殖でも増えていきます。他にも、植物の特定の箇所に群生する習性があり、植物の鑑賞価値も落ちます。
植物にカイガラムシが発生すると、吸汁により養分を奪われ、生育に被害を及ぼします。また、カイガラムシの排泄物は粘着質な甘い蜜状になって、放っておくとそこから、葉が黒くなるすす病や、枝幹にただれたような傷をつくるこうやく病を誘発します。さらにその排泄物にアブラムシや蟻が引き寄せられて繁殖するので、カイガラムシによる間接的な被害も甚大になっていきます。
カイガラムシの発生時期は、ガーデニングシーズンの4〜10月です。初夏からの数ヶ月間での繁殖をピークに、28℃ほどの温暖な気候で活動します。なお、バラに発生しやすいバラシロカイガラムシなどは通年発生し、他の種類でも、室内であれば年間を通して発生します。
カイガラムシ発生の原因は、翅をもつ個体が飛来して寄生したり、翅がなくとも、風にのって飛来して寄生することが主に挙げられます。また、知らないうちに衣服に付着して、室内にカイガラムシを持ち込んでしまうこともあるようです。
カイガラムシは風通しが悪く、埃っぽい場所を好むので、室内に置きっぱなしになっている観葉植物や、葉の密集した多肉植物などで発生しやすいです。
また、柑橘類などの果樹のほか、バラ科の植物に発生しやすく、バラ、サクラ、ウメは被害に遭いやすいので注意しましょう。
前提として、カイガラムシの駆除方法は成長段階によって分かれます。基本的にカイガラムシの卵や幼虫は繁殖期である5〜7月に発生し、8〜12月の時期には成虫へと成長してしまいます。成虫になってしまうと、硬い貝殻のような外殻のおかげで、殺虫剤などが効きにくくなるので、なるべく卵や幼虫の段階で駆除するように心がけましょう。
カイガラムシの卵は、布やティッシュなどで拭き取って除去します。なお、カイガラムシの代表的な種類であるコナカイガラムシは、綿のような卵嚢に包まれた卵を、葉の裏などに産みつけるので、日々、葉の下まで確認するようにしましょう。
他の種類のカイガラムシの卵は、成虫の体の下に付随していたり、すぐに孵化することが多いので、見つけるのが難しいです。
カイガラムシの幼虫の駆除は、殺虫剤が効果的です。スプレータイプや、顆粒の土にまくタイプの殺虫剤が販売されてますが、スプレーは噴射の際に植物が冷害をうける可能性もあるので気をつけましょう。
また、オルトラン水和剤、アクテリック乳剤、アプロード水和剤などを、5〜7月の間で3回ほど散布するのも非常に効果的です。
薬剤を使いたくない場合は、牛乳を霧吹きで吹きかけ、窒息させて駆除するこcとも可能です。牛乳をまいたあとは、水でしっかり洗い流します。ただし、牛乳をまいた際の悪臭や、洗い残しがカビの原因にもなるリスクもあります。
木酢液とは、炭を作る際にでた水蒸気を液化したもので、強い殺菌力があります。散布することで殺虫効果や害虫忌避、土壌の殺菌にも効果的に作用します。ただし、ごく少量ではありますが、人体に有害なホルムアルデビドが含まれているので、規定量に水で希釈して使用してください。
カイガラムシの成虫は歯ブラシや、爪楊枝などの先のとがったものでこそげ落としていきましょう。その際、必ず成虫を落としたまま放置せず、ティッシュなどに包んで完全に除去してください。
カイガラムシが大量に繁殖している場合には、剪定に耐えうる植物であれば、思い切って剪定するのもいいでしょう。その際、成虫や卵が振り落とされないように注意しながら、他の植物に接触しないように処分してください。
カイガラムシの被害にあった株を、鉢もしくは株ごと水に沈める方法で駆除もできます。水に沈めると窒息したカイガラムシが浮き上がってくるので、網ですくって取り除きましょう。水に沈めた植物は風通しと日当たりの良い場所で乾燥させてください。
カイガラムシの卵は、ほとんどが葉や葉裏に産みつけられます。こまめに葉水をすることで卵を洗い流すことができるので、繁殖前の春先にはよく葉水することをおすすめします。
多くの植物の休眠期にあたる冬季であれば、強い薬剤をまいても植物に影響が出にくいので、殺虫剤をまいて繁殖を防ぐのが効果的です。カイガラムシにはマシン油乳剤がおすすめで、散布すると成虫のカイガラムシであってに呼吸孔を塞ぐ効果があるので、防除につながります。
カイガラムシは埃っぽくて風通しの良い場所を好む性質があります。室内の部屋角などに長期間置いている観葉植物などは、風通しの良い明るい場所に数日移動したり、室内を清潔に保つことも、発生予防につながります。
カイガラムシの天敵はテントウムシです。特にコナカイガラムシにはクリプトテントウ。柑橘類の果樹に湧きやすいイセリアカイガラムシには、ベダリアテントウムシが効果的で、幼虫がホームセンターやネット通販で購入可能です。
カイガラムシは衣服に付着しやすいので、防除した後の服はすぐに着替えるなどして、室内に持ち込まないようにしましょう。もしくは、ウィンドブレーカーなどツルツルとした摩擦の少ない素材の衣服を着用して、カイガラムシの付着を防ぎましょう。
カイガラムシは種類によって、メスの成虫の体下に、卵が付随していることがあります。成虫を殺虫剤などで死滅させたとしても、卵が孵化して繁殖する場合があるので、死骸も除去することが大事です。
カイガラムシはさらに28の科に分けることができます。主な種類は以下の通りです。
カイガラムシは完全な駆除が難しく、一度発生すると翌年も発生するといわれるほど、手強く厄介な害虫です。できる限り卵や幼虫の段階で駆除し、冬に薬剤などで成虫を死滅させて防除していくのがいいでしょう。
カイガラムシ対策をして、楽しい園芸ライフをお楽しみください。
GreenSnap編集部