warning
error
success
information
果物の中でも人気のあるイチゴ(苺)は、育て方ポイントさえ押さえれば、意外にも家庭菜園でも育てることができます。また、増やし方も簡単なので、毎年繰り返し楽しめるのも魅力です。そんなイチゴの育て方を中心に、栽培や手入れのコツ、注意したい病害虫などについてまとめました。
イチゴを苗から育てるときに覚えておきたいのが「ランナー」と「クラウン」についてです。
ランナーとは、イチゴの株の根元から伸びるつるのような茎のことで、イチゴはこのランナーの反対側に花や実をつける性質を持っています。そのため、プランターに植える際は、ランナーの向きを同じ方向に揃えておくと、花や実に均一に日光が当たるようになり、管理がしやすくなります。
クラウンとは、株の根元のふくらんだ部分のことで、王冠のようにギザギザとした形状をしています。クラウンには成長点があり、ここからイチゴのランナーや花芽はここから伸びていきます。
また、クラウンは温めるとイチゴの果実が大きくなり、冷やすと葉がよく伸びたり花芽がよくついて収穫量があがるという特徴があります。栽培に慣れてきたら、クラウンの温度管理を試してみるのもいいですね。
イチゴは、日当たりがよい場所での栽培が適しています。十分に日光に当てることで、よく生育し実が甘くなります。また、病害虫の発生を予防するためにも、風通しのよい場所を選びましょう。加えて、水はけがよい場所であることも重要です。水はけが悪いと根腐れしやすくなります。
イチゴには大きく「一季なりイチゴ」と「四季なりイチゴ」の2つのタイプがあります。
一季なりイチゴの栽培適温は、気温17〜25度です。暑さに弱く気温が30度を上回ると実ができにくくなるので、鉢やプランターで育てる場合は、夏場は涼しい場所に移動するなどしたようがよいでしょう。
四季なりイチゴの栽培適温は、気温15〜30度と幅広いです。初心者は四季なりイチゴのほうが栽培しやすく、おすすめです。
イチゴは通気性や排水性の高さが栽培のポイントになるので、鉢やプランターで育てるときは、通気性に優れた素焼きのものか、野菜栽培用の650標準プランターがおすすめです。ストロベリーポットという名前でイチゴ栽培用の鉢も出回っています。
イチゴの栽培では、基本的に通気性と水はけのよい土を使いましょう。また、根を伸びやすくするには、柔らかい土であることもポイントです。
なお、日本の土は基本的に酸性に傾いていますが、イチゴに適した土は弱酸性なので、酸性の土を中和させる効果がある炭酸石灰を入れて、土壌のpHを調整する必要があります。苦土石灰を混ぜて弱酸性に近づけることも可能ですが、アルカリ性に傾きすぎることも多いので、必要量を守りましょう。
プランターや鉢植えでイチゴを栽培する場合は、市販の野菜用培養土やイチゴ栽培用の土を使います。
自分で配合土をつくる場合は、苗を植える3〜4週間前から準備しましょう。用土を赤玉土小粒6:腐葉土3:バーミキュライト:1の割合で混ぜ合わせて、緩効性化成肥料を用土1ℓにつき20〜30gいれ、1週間後、用土1ℓにつき苦土石灰を2gほどいれて使用しましょう。
畑や花壇など、露地栽培でイチゴを栽培する場合も、苗を植える3〜4週間前から土をつくって準備しておく必要があります。
イチゴの苗を植える時期は9月下旬〜10月ごろです。20度を少し下回るような肌寒さを感じるようになってから植えましょう。
イチゴは種からも育てられますが、初心者の場合は市販の苗を購入して植え付けるのがおすすめです。
株数はプランターや鉢植えの場合、深さは最低でも15〜20cmあるものを用意してください。5号鉢に1株、長さ65cmの650標準プランターの場合は3株が目安です。
鉢植えやプランターでイチゴを育てている場合、土の表面が乾いていたら水やりが必要です。水切れしないように管理する必要はありますが、かといって水の与えすぎもNGです。多湿になると根腐れを招くほか、土の表面にカビが発生することがあるので注意しましょう。
露地栽培の場合は自然に降る雨にまかせ、日照りが続いて土が乾燥しているとき以外は、水やりをしなくても問題ありません。
肥料を与える時期は、イチゴの苗を植え付けてから約1ヶ月後と、2月中旬頃です。おもに緩効性化成肥料を追肥します。
イチゴへ与える肥料はチッ素の配合割合が少なく、リン酸が多いものが適しています。チッ素が多いと葉や茎ばかりがよく育つため、実が甘くなりづらくなります。
配合の割合でいうと、窒素5:リン酸8:カリ5の製品がおすすめです。また油かすや骨粉などの有機質がふくまれていると、化成肥料では補えない栄養分が補給できるので、花がよく咲き実がよくつくようになります。
市販の製品にはイチゴ専用の肥料もあるので、初心者はそちらを使うのがおすすめです。
肥料不足だと葉が黄緑色や黄色になります。速効性のある液体肥料を水やりのかわりに与えてください。
肥料過多だと花が咲かない原因になるほか、病害虫の被害を受けやすくなるので、むやみに施肥しないように気をつけましょう。
多く与えすぎたら、プランター栽培であれば水やりの量(頻度ではない)を増やして、肥料成分を水で押し流しましょう。
露地栽培の場合は肥料を混ぜたあたりの土を取り除いて、別の土を寄せるようにしてください。
イチゴは虫や風によって受粉しますが、必ずしも上手くできているとは限りません。そのため、花が咲いたら筆などで雌しべに花粉をつけて、人工的に受粉させておくとよいです。
このとき強くなぞりすぎて、雌しべをつぶさないようにしましょう。あくまで、優しくなぞり、軽く付着するくらいで大丈夫です。
イチゴを栽培していると、しなしなでハリのない葉っぱになったり、黒っぽいシミができた葉っぱになるものもあります。こういった異常な葉っぱや古い葉っぱはこまめに取り除く、葉かきという作業をしましょう。葉かきの目安は、株の向こう側が透けて見える程度です。
こうすることで風通しがよくなって病害虫の予防になるほか、次に伸びてくる葉茎が太くハリのあるものになります。
品種にもよりますが、一つの花茎の先に3〜4こ程度の実が理想とされています。そのため、それ以上実がついている場合は小さいものや形がいびつなもの、花や実が二股になっているものはどちらかを選んで取り除く、摘果という作業をしましょう。
実がついてから以降も同じ花茎につぼみや花ができた場合は、取り除いてください。
イチゴのランナーは栽培中どんどんと伸びていきますが、放っておくと子株をつくろうとして余分な栄養分を使うので、栽培中は定期的に切って取り除きましょう。
収穫後、子株を増やして苗をつくりたいという段階になったら、ランナーは切らずに育ててみてもいいですよ。ランナーはそのまま伸ばしっぱなしにしていくと、次々と子株をつくってくれます。子株と親株の間でランナーを切れば、イチゴの苗を増やせますよ。
イチゴは、寒さ対策も欠かせません。−5度を下回ると越冬できないので、ワラを敷いたり黒マルチを被せて冬越しのための寒さ対策をする必要があります。
黒マルチを設置するときは、黒マルチのシートを上から被せて、苗のある膨らんだ部分を十字に切って苗を取り出せばOKです。黒マルチの端は土やヒモで止めておきましょう。
イチゴの収穫時期は、5月中旬〜6月中旬頃です。イチゴの実が真っ赤に熟したら、収穫しましょう。実が赤くなり始めると、鳥などに食べられてしまうことがあるので、防虫ネットを張るとよいでしょう。
イチゴは収穫後にあえて時間をおいて熟させる「追熟」をすると甘くなると勘違いされることが多いですが、これは間違いです。
たしかに追熟することによってイチゴの表面の赤みは増していきますが、これはイチゴが赤い色素を合成し続けているだけであって、糖度が増すというわけではないのです。
イチゴを甘くするのはあくまで収穫前のテクニックです。収穫したら、早めに食べましょう。
水やりは冬の間、できるだけ控えたほうが甘く育ちます。とはいえ、枯らしては意味がないので、土が完全に乾いてから3〜4日後に水やりするイメージでいましょう。
露地栽培の場合は雨の水分で十分なのであまり気にしなくて大丈夫です。ただし、1週間以上雨が降らない日が続く場合は水やりをしましょう。
また、基本の肥料に加えて、実がなりはじめた時期から週1回ほど、アミノ酸・糖・有機酸を水で溶かしたスプレーを吹きかけると、より甘くなります。
水1ℓに対し、お酢・クエン酸(粉末)・黒糖を1mlもしくは1gずつ溶かせば肥料スプレーの完成です。
ただし、あまり吹きかけすぎると肥料過多になるので、株の様子を見ながら与えてくださいね。
イチゴは花のつぼみができ始めるころから、よく脇芽も伸びるようになります。イチゴを甘くするには、この脇芽をこまめに取り除いて、栄養を十分につぼみに回してあげることがポイントです。
脇芽は葉茎をかき分けて株元を見たときに、クラウンとは少し離れた位置から伸び上がっている芽のことです。これをできるだけ根本からハサミや指で取り除いてください。
イチゴの葉っぱに白い粉のような跡が見られたら、「うどんこ病」にかかっている可能性が高いです。うどんこ病はカビが原因で起こる病気で、発生してしまったら発症部位を取り除いて、他の苗一体に殺菌スプレーを吹きかけてください。
春先や秋など、気温が低く乾燥した環境下で発生しやすい傾向にあるので、風通しをよくしたり、葉を湿らせるなどすると予防できます。
イチゴにわく黒い虫には数種類ありますが、一番多いのがアブラムシです。アブラムシは葉やつぼみにわくと思われがちですが、個体数が増えすぎると羽の生えた個体が発生して、株の周りを飛び回ります。
飛散しているアブラムシは駆除しにくいので、野菜用の殺虫スプレーを使ってください。
そのほかのイチゴによくわく害虫はこちらの記事で紹介しています。
イチゴの花が咲かない原因はいくつかありますが、前提として育てているイチゴの種類によって日照時間や気温などの花芽分化の条件が異なるので、条件を考慮しながら育てましょう。
12時間以下の短日と25度以下の冷涼な環境で花がよく咲くようになります。平均気温が25度以下でも日中の温度が高いと花が咲かなくなることがあるので、最高気温25度を目安にしましょう。
あまり日照時間は関係なく、気温が15〜30度の間のときに花芽分化が進むので、春から秋にかけてはよく花が咲きます。
一季なりイチゴの場合は日照時間と温度に気をつけましょう。四季なりイチゴなのに花が咲かない、という場合は肥料に問題がある場合が多いです。
こちらの項目にあるおすすめの肥料をよく確認して、イチゴの栽培にあった種類の肥料を与えてください。
イチゴの花は咲いたのに、実がならないという場合は、人工授粉がうまくできていない可能性があります。
人工授粉のコツはは10時〜14時の晴れた日に行うことです。この時間帯は花粉の分泌も多くなるので、成功率が上がります。強くなすりつける必要はありませんが、雌しべに均等に花粉がつくことで形良く品質のよいイチゴができます。
また、摘果(摘花)を適切にすること、ランナーを定期的に切ることも実つきをよくするコツですので、こちらの項目をよく確認してください。
イチゴにも連作障害はあります。連作障害とは同じ野菜を同じ場所(土)で連続して育てると、特定の線虫や病原菌が発生しやすくなり起きる生育障害です。
イチゴの休栽期間は2〜3年なので、そのくらいの期間をあけましょう。同じバラ科のリンゴ・ナシ・カリンを連続で育てても連作障害がでます。
また、プランター栽培では土を入れ替えるから問題ないと思われがちですが、新しく育てるときにプランターもきれいに洗わないと、菌や線虫が付着している場合があるので連作障害が起きることもあります。
甘いイチゴを収穫するためには、日光によく当てて育てるのが大きなポイントです。また、不要なランナーや脇芽などを切り落とし、実に栄養がしっかりと届くようにしましょう。自分で育てて収穫したイチゴを、ぜひ楽しんでみてください。
GreenSnap編集部