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平和の象徴ともされるオリーブの木は、その見た目と生命力の強さから、シンボルツリーとして長年人気を得ています。寒さに強く、ほとんどの品種で-10℃ほどまで耐えられるので、地植えにして庭で育てたり、鉢植えで育てるなど、好きなように楽しんでいる方が多いです。
今回は、そんな強健で生命力旺盛なオリーブに欠かせない、剪定の方法をご紹介します。
オリーブは地中海沿岸部が原産の常緑高木です。自生地では最大で樹高10mほどまで伸びることもあるほどとっても生育旺盛。そのためガーデニング初心者にも育てやすく、庭木にも室内の観葉植物としても人気です。
日本で育てる場合もオリーブの成長スピードはとても早く、地植えにすれば1年で50cmほど、鉢植えでも20〜30cmも伸びていきます。こちらの写真は日本の一般地で地植えにして育てているそうですが、樹高は5mほどになっているようです。
オリーブは理想の樹形を思い浮かべながら適度に剪定をしていかないと、あっという間に上に横にと成長していくので注意してくださいね。
先述したように、オリーブは成長スピードが早いのであっというまにぐんぐんと上に伸び、管理しきれない高さまで育ってしまうことがあります。とくに地植えにすればほぼ際限なく上に伸びていくので、剪定をして高さを抑え、2m以内で管理するのが理想です。
とくにオリーブの苗木にありがちなのですが、樹形の基礎ができていないオリーブは枝分かれせずにひょろひょろと上にだけ伸びていってしまいます。剪定をすることで枝が分岐して樹形が整っていくので、1〜5年生の苗はとくに樹形づくりをメインとした剪定をする必要があるのです。
オリーブは生育旺盛な一方で、適度に剪定しないと葉が茂りすぎて風通しが悪くなることがあります。そうなると株が群れて病害虫の被害に遭いやすくなったり、日に当たらない葉が弱り落ちて不恰好な姿になることも。定期的に剪定をしてオリーブの木を健康に育ててあげましょう。
オリーブの剪定時期は2月中旬〜3月中旬の早春です。
オリーブは平均気温が15℃ほどになる春の時期に花芽をつけ始め、初夏ごろに花を咲かせます。そのため、花芽がつく前に剪定をすることで、花芽を誤って剪定してしまうというミスが防げるので、結果的に花つき・実つきがよくなります。
また、この時期はちょうど休眠期から覚めるタイミングで、春から秋まで生育期になるので、強く剪定しても育成に影響がでにくいです。
なお、基本的には年に一度、春の時期に剪定を済ませますが、樹形があまりにも乱れて風通しが悪いようであれば、不要枝を落とす間引き剪定や、新梢の切り戻し剪定などは年間を通して行うこともあります。
オリーブの剪定は、つくりたい樹形をイメージしてから、下記の手順で切っていきましょう。
剪定と一口に言っても、枝を切る位置やねらいによって、大きく「間引き剪定」と「切り戻し剪定」に分けられます。
さらに切り戻し剪定には枝を切る深さによって「強剪定」と「弱剪定」に分けられるので、それぞれの剪定で切るべき枝や枝を切る位置について、詳しくご説明していきます。
間引き剪定とは、不要枝を根元から切ることで株全体の枝数を減らす剪定のことです。透かしと呼ばれることもあります。
間引き剪定をすることで風通しがよくなり、株全体に日がよく当たるようになります。つまり、間引き剪定はオリーブを健康にするための剪定なのです。
間引き剪定では不要な枝を切りますが、だからといってあまり枝数を減らしすぎるのも株にとって負担になります。
そのため、間引き剪定では下記をイメージして切っていきましょう。
具体的に5年生以上の成木であれば全体の3割、それ以下の苗木の場合は全体の1割ほどの不要枝を切るのが目安です。
間引き剪定で枝を切る位置は、分岐している根元ぎりぎりのところです。
間引き剪定では切った後に同じ場所から萌芽しないように、必ず成長点を残さずに剪定していきます。切り口が最小になるよう角度をつけて、なおかつできるだけ根元から切るようにしていきましょう。
もし枝を中途半端に残して切ってしまった場合、さらに枝が分岐して増えてしまったり、残した部分が枯れ混んで健康的にも見栄え的にも悪くなってしまうので気をつけましょう。
また、枝の直径3cmを超えるような太い枝を切るときは、ノコギリを使って下記のような手順で枝を切りましょう。
このような手順で切ることで、枝の重みで途中で枝が裂けてしまっても、①の下からの切れ込み部分で止まるので、幹を傷つけないですみます。
不要枝とは下記のような枝をいいます。
なお、オリーブの間引き剪定では平行枝・徒長枝については、ほかの不要枝を切って透かす量にまだ余裕があるようなら間引くようにしましょう。無理に減らす必要はないので、樹形をみながら切ってください。
また、樹形の頂点部分で分岐して、主幹の枝と競うように伸びている枝(立ち枝)があれば、どちらか1本を残して剪定しておきましょう。
間引き剪定が終わったら、次は切り戻し剪定です。
そもそも切り戻し剪定とは、枝を途中で切ってその下の脇芽に栄養を与えるようにし、枝を分岐させる剪定のことをいいます。つまり切り戻し剪定をすることで樹形をつくっていくことができるのです。
なかでも強剪定とは、枝を深めに切り戻しする方法のことを言います。
強剪定で枝を切ると、元々あった長い枝を生かすためのエネルギーが行き場を失って、切り口の下の芽に回るようになります。すると結果的に切り口の下の芽から勢いよく新しい枝が伸びていき早く太く育つので、樹形の骨格となるような枝がつくれるのです。
強剪定では、その後の樹形をイメージして枝を切ることが大切です。
株を遠くから見つめて未来の樹形・骨格を想像しながら、樹形を伸ばしたい方向の近くにある枝を選んで、芽の上5mmのところで切り戻ししましょう。
ただし、あまり強剪定で切り戻しする枝が多すぎると、樹形の風情が失われて不恰好になるほか、一気に勢いよく枝が増えるので乱れやすくなります。そのため強剪定をするのは5年生以降の成木であっても2〜3本にとどめ、1回の剪定で50cm以上は切らないようにしてください。
一気に強剪定するのではなく、数年かけて目指したい樹形に近づけていくといいですよ。
強剪定が終わったら、最後に弱剪定をして微調整しましょう。
弱剪定とは枝を浅めに切り戻す剪定のことで、強剪定とは反対に、切り口の下の芽からは細めの枝が分岐して伸びていきます。強剪定が樹形の骨格にあたるなら、弱剪定は樹形の肉付け、ディティールをつくっていく剪定とも言えるでしょう。
弱剪定で切るべき枝は、不要だけれども残すことになった平行枝や徒長枝です。とはいえ、あまり深く考えずに、全体の樹形を乱すような枝の先端を3分の1ほど切り落とします。強剪定と同じく、芽の上5mmのところで切りましょう。
ときおり樹形と遠くから眺め直して、最後に微調整するようなイメージで切るといいですよ。
オリーブを剪定し終わったら切り口には癒合剤を塗っておきましょう。病害虫を予防する効果があるので、とくに太い枝を切ったときは必ず塗布してください。
置き場所や水やりの頻度はとくに変えないで大丈夫です。
オリーブの剪定は、1〜4年生の若木とそれ以降の成木では、剪定の方法が異なります。これまでは成木のオリーブの剪定方法をご紹介しましたが、ここからはオリーブの苗木の剪定についてご紹介していきます。
若木(苗1〜4年生)のオリーブの剪定は、樹形の骨格を作る、非常に大事な剪定になっていきます。枝がバランスよく配置されるように数年かけて樹形づくりをしていきましょう。
また、オリーブは樹形のパターンがいくつかあり、どこで幹を分岐させるかで樹形のイメージもかなり変わります。オリーブを剪定するときは、理想の樹形を思い浮かべながら剪定しくといいですよ。
主幹を思いっきり切り戻します。切り戻す位置地上から40〜60cmのところがおすすめですが、次項の理想の樹形に合わせて切り戻す位置は変えましょう。切り戻した部分から主枝(主幹から分岐する枝)が伸びてくるので、イメージしながら切ってください。
主枝候補の枝を4〜5本残して、あとは切り落としてください。基本的には株を真上から見たときに360°に枝の広がりが分散するようなイメージで枝を残していきます。
また、一般的には第一主枝の分岐角度が50〜60°、第二主枝45°、第三主枝40°程度が理想的とされています。下の主枝から上にいくにつれて角度が狭まるようにすればいいです。またこの時期に麻紐などで誘引して角度を変え、理想の樹形に仕立てていくことも可能です。
切り落とすものと残すものを判断するコツは、下記のとおりですが、心配であれば残して翌年に切り落としてもいいでしょう。
主枝3〜4本を残して、それ以外の枝は間引いてください。主枝の先端は3分の1くらいの短さになるよう切り戻し剪定をしましょう。収穫を楽しみたい場合は新梢を多く残してください。
オリーブの樹形は、鉢を含めて、ひし形になるように剪定していくと、ナチュラル感のある雰囲気を楽しむことができます。
鉢植えなら好みの高さで、地植えなら30cmほどの位置で主幹を切り戻して樹形作りをしていきます。翌年は主枝を4本ほどに整えて、左右交互になるように配置するのがポイントで、麻紐で左右に開くよう誘引しながら形作るといいでしょう。
株の下の枝を伸ばさずに切り落とし、株の上の方をこんもりと茂らせた、トピアリーのようなデザインです。主幹がある程度まで伸びたら地上60〜90cmほどの高めの位置で切り落とし、主枝に分岐させて、株上部のボリュームを作っていきます。
庭木のシンボルツリーとして、樹高2〜3mほどで楽しむスタイルです。苗木一年目は主幹を60〜90cmのところで切り戻し、3〜4年目はひし形になるよう、バランスよく剪定していきましょう。上へ上へと成長していくので、10〜14年の間に、主幹を2段階にわけて短く切り戻してください。
低い位置で主枝を分岐させ、逆三角形のように茂らせるスタイルです。斜めに仕立てるため、花芽がつきやすく、管理もしやすいので収穫にも適しています。苗木一年目は主幹を地上30cmのところで切り戻してください。その後は斜めに伸びる主枝の側枝を切り戻してください。
オリーブは枝が細く長くひょろひょろとした姿で成長していってしまう場合があります。苗木1〜4年程度では一般的ですが、それ以降でも株に太さ出ない場合は、高さを抑えるように頂部の主幹を思い切って切り戻すといいでしょう。
枝を短くするとそのまま枯れるのではと心配になるかもしれませんが、オリーブはかなり丈夫な植物なので、その切り口の下から分岐して枝伸びていきます。あとは前の項目で説明したような手順で樹形の骨格をつくっていきましょう。
そのままひょろひょろと高さだけが出てしまうと、根が支えきれなくなる可能性があります。場合によっては、支柱などを挿して風の抵抗に負けないよう支えてあげてください。
オリーブの剪定ででた不要枝は、挿し木にして増やすこともできます。その際は一芽ついた新梢を選ぶようにしましょう。
海外には樹齢2000年にも達するオリーブの木がある通り、オリーブはとても強健で、うまく育てればわたしたち人間よりはるかに長生きする果樹です。
剪定を制すもの、オリーブを制すとまで言われるほど、剪定はオリーブ にとって、とても大事なメンテナンスなのでしっかり剪定のコツを覚えて、長くオリーブの栽培を楽しんでくださいね。
GreenSnap編集部